「火星の人類学者」読了
オリヴァーサックスの奇妙な患者見物記。
正直やや野次馬的な感じのノンフィクションだった。でも視点は暖かくそして面白い。読む価値あり。
●色盲の画家
交通事故で脳に障害が起き、色盲になってしまった画家、脳が原因で後天的に色盲になる色だけではなく、コントラストも強く感じる、そのため日中は調節のためサングラスをかけるようになってしまったという、この患者は薄暗がりだと逆に視力が鋭敏化した主張し事実、夜なら4ブロック先の自動車のナンバープレートも楽々と読めるようになったという。日中はまぶしすぎるため次第に夜型人間になり安楽を得るようになったという。
脳は視覚情報を低次、高次の二段階で情報処理しておりこの高次の部分が事故で損傷したために信号処理されていない生の視覚情報を見ているためにこうなるらしい。
●最後のヒッピー
グレッグは脳の腫瘍のため失明、まったく見えないにもかかわらず本人は盲人であることを認知できない。
精神にも大きな障害、多幸感、短期記憶にも障害が起こり数分前のことは忘れてしまう、しかし1969年以前のロックのことは覚えている。そしてグレートフルデットのコンサートがニューヨークにやってきた。
●トゥレット症候群の外科
省略
●「見えて」いても「見えない」
六歳のころから盲目のヴァージルは婚約者の勧めで視力回復手術を受けることに、彼は45年ぶりに晴れて晴眼者となるはずだった。しかし脳はすでに見る能力をほぼ失っていたばかりか、見るという行為自体が彼に過剰なストレスを与えることになる。彼は晴眼者としては見くびられ盲人としてのアイデンティティーも否定され葛藤するのだった。
晴眼者の価値観を盲人にはめ込もうとしても不幸な結果しか得られないのではないかという問題を提示する話。
●夢の風景
12歳まですごした遠いイタリアのふるさとが忘れられない、病的ホームシック男の話。彼は故郷への憧憬のあまり、絵を書き始める、その数数千枚。その彼の頭の中には三次元CGのごとく正確に完璧なふるさとが存在していた。妻の死をきっかけに故郷に帰りたいと思う気持ちは日に日に強くなる、、。非常に印象深い話だった。
●神童たち
イデオサヴァンの話
●火星の人類学者
「高い機能を持つ」自閉症をアスペルガー症候群とよぶ。古典的な自閉症との違いはアスペルガー症候群の人たちは自分の経験、内面的な感情とその状態を話すことができるということ。
アスペルガー症候群の女性動物学者の話。彼女は自分のこと火星の人類学者と称する、動物相手なら気持ちを察することができるが人間相手だとまるで火星の人類学者のように地球住民を調査して理解しようとする感じなのだという。
以下引用
彼女は最近の講演でこう締めくくった。「もしぱちりと指をならしたら自閉症が消えるとしても、私はそうしないでしょう- なぜならそうしたらわたしがわたしでなくなってしまうからです。自閉症はわたしの一部なのです。」自閉症にはさまざまな面があると信じているから、彼女は自閉症「根治」するという考え方に不安を抱いている。
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)
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